技術情報
TECHNICAL INFORMATION
ラックギヤ・歯研ラック・各種歯車に関する
基礎知識や、製作をご検討の際に役立つ情報をご紹介します。
RACK GEAR BASICS
ラックギヤとは?仕組み・特徴・用途・使用例を解説
ラックギヤは、棒状の部材に一定の間隔で歯を並べた、直線状の歯車です。 円形のピニオンギヤと組み合わせて、回転運動と直線運動を変換します。
「ラックギア」と表記されることもありますが、いずれも同じ部品を指します。 英語では「Rack」または「Rack Gear」と呼ばれ、ピニオンと組み合わせた機構を「ラックアンドピニオン」といいます。
ピニオンギヤの回転をラックギヤの直線移動に変換できるため、 切断機・切断装置の送り機構や位置決め用途、 搬送設備などで使用されています。
本記事では、ラックギヤ(ラックギア)の仕組み、ピニオンギヤとの関係、 主な種類・用途、モジュールと移動距離の計算、材質・熱処理、製作や選定時の確認項目を 歯車メーカーの視点からわかりやすく解説します。
BASIC STRUCTURE
ラックギヤの基本構造
ラックギヤは、一直線に歯を並べた部品です。 これにピニオンギヤをかみ合わせて回転させることで、 ラックギヤが直線方向に移動します。
歯が直接かみ合って動力を伝えるため、 送りや搬送に用いられます。ラックを固定し、ピニオンを備えた駆動部がラックに沿って移動する構成もあります。 位置決め精度は、歯の精度だけでなく、バックラッシや取付精度、ガイド、制御条件にも左右されます。
RACK GEAR
ラックギヤ
直線状に歯を持つ部品です。装置の構成により、移動側にも固定側にも用いられます。
PINION GEAR
ピニオンギヤ
ラックギヤとかみ合い、回転を伝える円形歯車です。
RACK AND PINION
ラックギヤとピニオンギヤの関係
ラックギヤは、一般にピニオンギヤと組み合わせて使用されます。 円形のピニオンギヤが回転することで、 直線状のラックギヤが左右へ移動します。 この機構を「ラックアンドピニオン」と呼びます。
組み合わせて使用する際は、 モジュールまたはCP・DP、圧力角、歯形などの条件を合わせる必要があります。はすばの場合は、ねじれ角や歯すじの向き、モジュールの基準も確認します。 相手となるピニオンギヤが決まっている場合は、 ご相談時に仕様をご提示いただくと確認がスムーズです。
MODULE / PITCH / TRAVEL
ラックギヤのモジュール・ピッチ・移動距離
モジュールは歯の大きさを表す値です。歯の間隔を表すピッチや、ピニオン1回転あたりの移動距離と関係します。以下は、すぐばラックと対応するピニオンの基本例です。
モジュールとピッチ
モジュールをm、歯のピッチをpとすると、p=π×mです。m2の場合、ピッチは約6.283mmになります。
ピニオン1回転の移動距離
ピニオンの歯数をzとすると、理論上の相対移動距離はL=π×m×zです。ラック固定の構成では、駆動部が進む距離に相当します。
CPラックとは
CPは円ピッチを表します。CP=π×m、m=CP÷πです。CP10は歯のピッチが10mmで、m10とは異なります。
| 歯の仕様 | ピニオン歯数 | 1回転の理論移動距離 |
|---|---|---|
| m1 | 20歯 | 約62.83mm |
| m2 | 20歯 | 約125.66mm |
| m3 | 20歯 | 約188.50mm |
| CP10 | 20歯 | 200mm |
計算例は理論値で、実際の位置決め精度を保証するものではありません。はすばラックは歯直角・軸直角モジュールの区別やねじれ角を確認し、上記の式をそのまま適用しないでください。
TYPES
ラックギヤの主な種類
ラックギヤには、歯すじの方向や用途によりいくつかの種類があります。 代表的なものとして、すぐばラックギヤとはすばラックギヤがあります。
STRAIGHT RACK
すぐばラックギヤ
歯すじが直線状に設けられた、基本的なラックギヤです。 幅広い産業機械や送り機構で使用され、 装置仕様に応じた長さや追加工にも対応しやすい形状です。
HELICAL RACK
はすばラックギヤ
歯すじが斜めに設けられたラックギヤです。 動きの滑らかさや運転時の静粛性が求められる場合に、 使用条件に応じて検討されます。
CUTTING / GRINDING / HARDENING
歯切りラック・歯研ラック・焼入れラックの違い
すぐば・はすばは歯すじの分類です。一方、歯切り・歯研は加工や仕上げ、焼入れは熱処理の区分であり、組み合わせて仕様を決めます。
| 区分 | 内容 | 検討するときのポイント |
|---|---|---|
| 歯切りラック | 切削により歯を形成したラック | 必要精度・荷重・コストに合わせて加工仕様を確認 |
| 歯研ラック | 歯面を研削して仕上げたラック | 歯面仕上げやピッチ精度など、必要な精度項目を確認 |
| 焼入れラック | 熱処理で硬度を高めたラック | 耐摩耗性、必要硬度、焼入れ範囲、変形を確認 |
焼入れと歯研は別の工程です。「焼入歯研ラック」のように組み合わせる場合もあります。焼入れ後の変形や研削代を考慮して工程を検討します。
MATERIAL / HEAT TREATMENT
ラックギヤの材質・熱処理を選ぶときの考え方
材質は、荷重・使用頻度・必要寿命・使用環境・追加工の条件をもとに検討します。材質名だけでなく、硬度や熱処理、仕上げを含めて確認することが大切です。
一般的な機械用途
S45Cなどの炭素鋼を候補として、強度と加工性のバランスを確認します。用途により、調質や歯面の高周波焼入れなどを検討します。
高負荷・耐摩耗用途
SCM系の合金鋼などを候補とし、鋼種に適した熱処理を選びます。調質・高周波焼入れ・浸炭焼入れは同じ処理ではなく、必要な硬度や硬化層に合わせて検討します。
腐食や特殊な使用環境
SUS系などの材質や表面処理を検討する場合があります。耐食性に加え、強度・摩耗・相手ピニオンとの組み合わせ・加工性を確認します。
長尺ラックでは熱処理による反りや曲がり、穴位置や断面寸法への影響も確認します。穴・タップ・切断などの追加工は、熱処理前後のどの工程で行うかを含めて相談してください。
FEATURES
ラックギヤの特徴
01
直線駆動に対応
ピニオンギヤの回転を、 ラックギヤの直線移動として伝達できます。
02
長い移動距離に対応しやすい
必要なストロークに応じて、 長尺ラックの使用を検討できます。
03
位置決め用途に活用
切断装置や搬送設備など、 移動位置の管理が必要な機構で使用されます。
APPLICATIONS
ラックギヤの主な用途・使用例
ラックギヤは、長いストロークを確保しやすく、送り・搬送・位置決めなどの 直線駆動機構に利用されます。代表的な用途と使用例をご紹介します。
01
切断機・切断装置
切断位置の調整やワーク送りなど、 正確な直線移動が求められる部分に使用されます。
02
位置決め機構
加工位置や停止位置を管理する必要がある装置で、 直線駆動部品として検討されます。
03
搬送装置
部品や材料を一定方向へ移動させる機構に用いられます。
04
専用機・自動化設備
装置仕様に合わせた長さや形状、 穴加工などが求められる場合があります。
CHECK POINTS
ラックギヤを検討するときに確認したい項目
ラックギヤの製作や選定では、用途や必要な移動量、 組み合わせるピニオンギヤなどの条件を確認することが重要です。
モジュール・圧力角
相手ピニオンのモジュール・CP・DP、圧力角、歯形を確認します。
全長・断面寸法
必要なストロークや取付スペースに応じて確認します。
材質・熱処理
荷重・使用環境に加え、必要硬度や焼入れ範囲を確認します。
精度・仕上げ
位置決め精度や動作の安定性に関係します。
追加工・取付条件
穴加工や段加工、取付方法などを確認します。
INSTALLATION / TROUBLESHOOTING
ラックギヤのバックラッシ・摩耗・異音を確認するときのポイント
バックラッシと位置決め
バックラッシは、かみ合う歯の間のすきまです。大きいと反転時の遊びにつながりますが、過度に小さくすると動作不良の原因になる場合があります。必要なすきまは仕様と使用条件に合わせて確認します。
取付と歯当たり
ラックとガイドの平行度、ピニオンの取付位置、歯当たりを確認します。複数のラックをつなぐ場合は、接続部のピッチの連続性にも配慮します。
摩耗・異音の原因
潤滑不足、異物、取付のずれ、過大な荷重、硬度や材質の組み合わせなどが影響します。摩耗した歯面の写真と使用条件をあわせて確認します。
ラックの全長と移動ストロークは同じではありません。端部でのかみ合い範囲、駆動部の寸法、取付位置などを考慮して有効な移動範囲を決めます。
PRODUCT & PROCESSING
ラックギヤの製作・追加工をご検討の方へ
対応モジュール、長尺加工、歯切り・歯研、材質、追加工など、 実際の製作対応については製品ページでご案内しています。指定長さへの切断、取付穴・タップ穴・ピン穴などの追加工についても、図面と材質・硬度を確認して対応可否を検討します。
図面がない場合や、既存部品の置き換えについても、 現物・写真・使用条件など分かる範囲の情報からご相談いただけます。図面、相手ピニオンの仕様、数量、希望納期、熱処理の有無をお知らせください。
FAQ
ラックギヤについてよくある質問
QモジュールとCPは何が違いますか?
モジュールは歯の大きさを表し、CPは円ピッチを表します。すぐばラックではCP=π×mの関係があります。例えばCP10のモジュールは約3.183で、m10とは異なります。
Qピニオンが1回転すると何mm移動しますか?
すぐばラックでは、理論移動距離はπ×モジュール×ピニオン歯数で求められます。m2・20歯の場合は約125.66mmです。はすばの場合はモジュールの基準とねじれ角を確認します。
Qラックの全長と移動ストロークは同じですか?
同じではありません。ラックの端部でかみ合いを確保する範囲、駆動部の寸法、取付位置などを考慮して、装置の有効ストロークを確認します。
Q歯研ラックはどのような場合に検討しますか?
歯面仕上げやピッチ精度など、歯切り後の仕上げ精度が求められる場合に検討します。装置全体の位置決め精度には、取付精度、ガイド、バックラッシ、制御条件も影響します。
Q指定長さへの切断や取付穴加工は相談できますか?
図面、材質、硬度、熱処理の状態を確認して、切断や穴・タップなどの追加工の対応可否を検討します。焼入れ後は加工が難しい場合があるため、加工箇所と熱処理前後の工程もお知らせください。
Q ラックギヤとラックギアは違いますか?
いずれも同じ部品を指す表記として使用されています。 当社サイトでは主に「ラックギヤ」と表記しています。
Q ラックギヤは単独で使用できますか?
一般にはピニオンギヤと組み合わせ、 回転運動と直線運動を変換する機構として使用します。
Q すぐばラックギヤとはすばラックギヤの違いは何ですか?
主な違いは歯すじの方向です。 すぐばラックギヤは歯すじが直線状で、 はすばラックギヤは歯すじが斜めに設けられています。 用途や動作条件に応じて検討します。
Q 現物から交換用ラックギヤを相談できますか?
現物や写真、使用している装置、相手部品、必要寸法などをもとに、 交換用ラックギヤとして確認できる場合があります。 摩耗や破損の状態も含め、分かる範囲の資料をご提示ください。
Q 2,000mmの長尺ラックギヤは製作できますか?
当社では、長尺ラックギヤは最大2,000mm程度までを目安に対応しています。 ただし、モジュール、断面形状、材質、熱処理、必要精度、追加工の内容によって 対応可能な長さが変わる場合がありますので、図面をご提示のうえご相談ください。
Q モジュール0.3のラックギヤは加工できますか?
当社では、小モジュールのラックギヤ加工にも対応しており、 モジュール0.3の製作も検討可能です。 歯幅、全長、材質、歯形、必要精度などによって加工条件が変わるため、 詳細は図面を確認のうえ対応可否を判断します。
Q ラックギヤは1個から試作できますか?
試作1個からご相談いただけます。 形状、材質、モジュール、全長、熱処理、追加工などの条件を確認し、 製作方法と納期を検討します。
Q 図面がなくてもラックギヤの相談はできますか?
現物、写真、使用する装置、相手となるピニオンギヤ、必要な長さや数量など、 分かる範囲の情報から確認できる場合があります。 現物から寸法や仕様を確認する場合もあるため、まずは資料をご提示ください。
Q ラックギヤの高周波焼入れ・浸炭焼入れにも対応できますか?
材質、必要硬度、焼入れ範囲、寸法、歪み許容、後加工の有無などを確認したうえで、 高周波焼入れや浸炭焼入れを含む仕様について対応を検討します。 熱処理後に歯研などの仕上げが必要な場合は、研削代や変形量もあわせて確認します。
Q ラックギヤとピニオンを一緒に相談できますか?
はい。ラックギヤとピニオンギヤを組み合わせて使用する場合は、 モジュール、圧力角、歯形、歯幅、材質、熱処理、必要精度などを確認しながら 組み合わせ条件を検討します。
